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ピンクレディー、振付にパブリシティー権主張 賠償求め提訴

昭和50年代に一世を風靡(ふうび)した元ピンク・レディーの未唯さんと増田恵子さんが、女性週刊誌に掲載された過去のステージ写真をめぐり、「振りつけにもパブリシティー権がある」として、出版元の光文社に計312万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしていることがわかった。歌手が振りつけにもパブリシティー権を主張するのは初めてとみられる。現状ではパブリシティー権の存否には明確な線引きがなく、振りつけにも財産価値が認められるどうかかが注目される。 (福田哲士)

 訴えによると、週刊誌「女性自身」は今年2月27日号で、「ピンク・レディーの激しいダンスでダイエットする」との趣旨の企画記事を掲載。記事とともに、大ヒット曲「ウォンテッド」「渚のシンドバッド」などを歌い踊る2人の過去のステージ写真など、計14枚の写真を無断掲載した。

 2人は訴えの中で、「ピンク・レディーとして5曲連続ミリオンセラーを記録するなど人気を集め、その知名度はいまだ衰えていない」として、まずは肖像のパブリシティー権を主張。

 その上で、振りつけ自体にもパブリシティー権があると主張している。2人の言い分はこうだ。

 「過激な振りつけをまねるファンが続出するなど、子供から大人まで幅広い支持を受け、お茶の間にピンク・レディー旋風を巻き起こし、社会現象になった」

 つまり、振りつけと曲が一体となってピンク・レディーを印象づけているため、振りつけについても名前や姿と同様にファンをひきつける要因として、経済的な利益を生んでいるという主張だ。

 訴えられた光文社側は今月1日の第1回口頭弁論で「振りつけの権利は振付師に帰属し、歌手の権利ではない。また、社会現象となった事象を伝えることは報道に準じており、パブリシティー権は当たらない」と、真っ向から争う姿勢を示している。

 振りつけをめぐっては、バレエや日本舞踊の振付師に著作権を認めた判決はあるが、著作権法を管轄する文化庁も「パブリシティー権を主張したケースは聞いたことがない」という。

 パブリシティー権については、東京高裁が平成18年、アイドルの写真を無断掲載した出版社に賠償を命じるなど、本人の姿に対しては認める司法判断が増えている。だが、パブリシティー権が認められる範囲については明文化した法的規定もまだなく、その線引きは学説によって分かれるのが実情だ。この訴訟で、振りつけにパブリシティー権があるのかどうかが初めて正面から議論されることになる。

 パブリシティー権に詳しい山崎司平弁護士は「振りつけは従来のパブリシティー権からみると外縁にあたる。概念が不明確になっていく危険性もあるが、権利を拡大するという点では興味深い訴訟だ」と話している。

 ■ピンク・レディー 静岡県出身のミー(現・未唯)とケイ(現・増田恵子)が昭和51年に結成した女性デュオ。代表曲は「UFO」「サウスポー」「透明人間」など。56年に解散。その後、4度の再結成を繰り返し、現在はそれぞれ女優として活動している。振付師の土居甫(はじめ)さん(今年9月14日、70歳で死去)が手掛けた振り付けは当時、大流行した。

 ■パブリシティー権 ファンや客をひきつける力(顧客吸引力)のある著名人の名前や肖像などから生じる経済的な利益を、本人が独占的に得ることができる権利。第3者が無断で商品を製造販売すると権利侵害となる。肖像権が人格権に基づくのに対し、財産権的な側面をもつ。
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